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食いしん坊の血筋 - 2014.03.20 Thu

我が家には食いしん坊の血筋が流れている。

その源泉は、5年前に89歳で亡くなった父方の祖父だ。
柔道5段の美丈夫で、若い頃は街を闊歩すると、
女性に振り返られたとかいう、背筋のしゃんとした大正男。

えいじ

とにかく美味しいものが好きで、朝ご飯食べながら、
もう昼・夜ご飯をどうするか考えているような人だった。

北海道から毛蟹、明石からたこ、広島から牡蠣、
おでんは東京の白山の決まったお店から取っていて、
うなぎというと、わざわざ1時間かけて気に入りの店に食べに行くこだわりよう。

その食べ物に対する執着心は、厳選されたものを買うとか、
食べに行くに留まらず、ときには家族を巻き込んでの一大作業になってしまう。
山を借りて鳥を育てる、しいたけを栽培する、
巨大な水槽を作って食用の鯉を飼育する、
果ては私の父である長男を台湾に送り込み、
餃子の皮の作り方を学ばせたこともあった。
実家は、中華料理屋でもないので、全く自家消費のための修行。。。
祖父は、一体、「食べる」ということに、どれほどのお金と情熱を注ぎ込んできたことか。

そんな祖父の昔話をしている折、父が言った。
「でも、あれは贅沢じゃなかったんだよなあ。
昔食べたものの美味しかった味を追い求めていただけなんだ。」

そこで、ふと、有吉佐和子の「複合汚染」に出てくる「横町のご隠居」を思い出した。
このご隠居は、口うるさいお爺さんで、野菜でも何でも、
「本物の味」がなくなってしまったことを嘆いている。
戦前、農薬や添加物とは無縁のところで作られた食べ物たち。
祖父が追い求めていた「本物の味」は、このご隠居が懐かしがっていたものと
同じだったのだろう。

「贅沢」ではなく、「本物」を求める食べ物を巡る旅。
そういえば、食べ物を通して祖父から教わった物事の数々は、
決して贅沢屋さんの言葉ではなかった。

「天皇陛下とも乞食とも一緒に食事ができる人でありなさい」
という言葉からは、人を経済力や社会的地位で判断しないことを。

戦時中、少しでも食べ物が手に入ったら、みんなで分け合ってきたことで、
マラリアで死にかけたとき、友人が危険を顧みず、命を救ってくれた話から、
分け合うことの大切さを。

美味しいものを食べに連れて行ってくれるとき、
「堪能しましたか?(満ち足りるまで食べなさい)」と、
いつも、聞いてくれる優しさから、もてなすことの喜びを。

そして、どうやら私たち孫も、その血筋を引いているらしい。
妹夫婦が、ブラジルに行って、パーマカルチャーの勉強をしているのも、
きっと、その「食いしん坊」が血の中で騒ぐからだ。
高級なレストランを渡り歩くよりも、できるだけ顔の見える生産者さんから野菜を買ったり、
栽培したり、自家製のものを増やして行く方が、この血は喜んでくれるだろう。

最後まで自分のことは自分でする、背筋ののびた祖父であったが、
亡くなる前の1ヶ月は、とうとう寝たきりになってしまった。
ある日、記憶や意識もぼやっとする中、
左利きである祖父の手が、パーの状態で「すっ」と直角に上がった。
命がつきる前に、少しでも多くの言葉を聞きたい。
「おじいちゃん、何?」ベッドに身を乗り出して、言わんとすることを聞き取ろうとする私たち。

祖父は、その手を振りながら、うなるように言った「5キロ、5キロ」
「小布施の栗を5キロ買ってきてくれ」
「・・・・・」

へっ?思わず、吹き出さずにはいられなかった。
やっぱり、この人は食べ物が好きなんだなあ。
きっと、天国で「本物の」美味しいものを心行くまで、食べていることだろう。
口に入れてあげることのできなかったあの栗も。
「おじいちゃん、小布施の栗は美味しいですか?」

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プロフィール

mamita809

Author:mamita809
海と山に囲まれた葉山在住シングルママです。ラテン系ハーフの娘はん(小学生)、古風な父、浜を走るアラ還の母との楽しい毎日。大好きな自然のこと、カヌーのこと、子育てのこと、家族のこと、日々の徒然を綴ります。

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